第6章 静寂を裂く朝
言葉を吐き出した途端、部屋の中の空気が変わった。
“……恵に、触れられた。……わたしも、それを……拒まなかった”
それが、たしかな現実として空間に染み込んでいく。
虎杖悠仁は俯いたまま、拳を握っていた。
その沈黙が怖かった。
けれど、それ以上に――
彼が顔を上げたとき瞳の色が変わっていたことが、何より恐ろしかった。
悠「……そっか。」
たった一言、静かに口にした彼は、ゆっくりと立ち上がった。
そしてベッドの端に座るみみの前に立ち、身を屈めて見下ろしてくる。
悠「じゃあさ。」
低く、喉に掛かった声。
悠「今度は……俺の番、だよな?」
「え……?」
思わず瞬きをしたみみの頬に、ぴたりと彼の手が添えられる。
優しいはずの手が、妙に熱を帯びていた。
彼の指が顎をすくい、顔を上向かされる。
強引でも、暴力的でもない。
でも――
逃げられない。
悠「他の男に抱かれて、泣きそうな顔してるくらいなら……最初から、俺が壊しておけばよかった。」
そう囁かれた瞬間、背筋が凍る。
けれど同時に――
熱が、下腹部にじわりと染み出した。
「ゆ、悠仁……っ?」
悠「なあ。俺、ずっと我慢してたんだよ? オマエが誰を見てるのか、誰に笑ってるのか……見て見ぬふりしてた。でも、もう限界。……伏黒に先を越されたとか、関係ない。俺のものにする。今、ここで。」
その宣言と同時に、みみの肩が押し倒される。
ベッドに背中が沈み、悠仁の影が覆いかぶさってくる。
制服のシャツのボタンを彼が自らの手で乱暴に外しながら、みみの太腿に膝を割り込ませてきた。
逃げられない。
けれど、みみの身体は――
もう逃げたいと思っていなかった。