第4章 再会
彼女は1歩も引かずにずかずかと部屋に入り、女の腕を引いて立ち上がらせた。
「ちょっと……野薔薇……。」
野「文句言う元気あるなら余裕。とにかく外の空気吸いに行くわよ。」
こうして、強引に連れ出されたのは良いものの気づけば2人は繁華街のカフェテラスに座っていた。
ちょうど陽が落ちかける時間ほんのりとオレンジ色に染まった街に、冷たい炭酸のグラスが涼やかに光っている。
野「……やっぱ外出て正解だったでしょ。」
「……まぁね。人間らしいこと、久々にしてる気がする。」
女が小さく笑うと野薔薇はニヤリと唇を吊り上げて、身を乗り出す。
野「で、最近さ、アンタ……誰かとイイ感じなの?」
「は……? 何それ急に。」
野「恋バナ、恋バナ! 疲れてるときほど、そういう話が効くのよ。で? 五条先生? それとも夏油先生? あーいや、虎杖とか?」
女の顔が一気に赤くなったのを見逃さず、野薔薇はククッと笑った。
野「図星?」
「……べ、別に誰ともそういうんじゃ……ないけど……。」
野薔薇はグラスのストローをくるくる回しながら、わざとらしく意味深な視線を送ってくる。
「やめてよ……もう。」
野「ふふ、良いのよ別に。誰に恋しようと、アンタが幸せならそれで。けどね、1個だけ言わせてもらうなら――選ばせるな。選ぶ女になりなさいよ。」
彼女の視線は真っ直ぐだった。
からかうようでいて、その奥にある本気の優しさに女は胸の奥が少し温かくなるのを感じた。
「……うん。ありがと、野薔薇。」
野「良いってば。そんで、落ち着いたら今度は私の恋バナ聞いてね? 今気になってる人、ちょっと特殊な男なのよ……ふふ。」
そんな風に笑う彼女の横顔は、いつもより少しだけ柔らかく見えた。