第4章 再会
「ち、違うの、傑……っ、そんなつもりじゃ――。」
傑「じゃあ、どんな“つもり”だったの?」
瞬間、夏油の笑顔がふっと消えた。
微笑をたたえていたはずの目が、感情の読めない暗い色に染まっている。
まるで深い井戸の底を覗いているような、底知れない静寂。
傑「……私さ、君が戻ったときの顔ちゃんと見てたよ。泣いた後の赤い目元も、首筋に残ってた微かな痕も――全部。」
傑は歩み寄る。
逃げようとする隙を与えないように、1歩1歩、確実に距離を詰める。
傑「宿儺に“された”あと、悟に“抱かれた”ってことは、つまり……君は、どっちにも抱かれてるわけだ。」
「ち、違うっ……違うのっ、あれは……っ!」
女は震える声で言葉を紡ごうとするが、傑の手がそっと顎を掴む。
力はないのに、逃げられない。
傑「悟は、君を“取り戻した”つもりなんだろうね。でも、君の身体が本当に“誰のもの”か――ちゃんと確かめてみないと。」
「……やめて、傑……っ。」
傑「ねえ、君の身体……私のこと、ちゃんと覚えてる?」
傑は優しく唇を寄せてきた。
拒絶しようとしたが彼の手が腰を掴み、ぐっと引き寄せる。
ぴたりと密着した体温が、鼓動を早める。
傑「こうして抱きしめると、ちゃんと思い出す? 私が初めて君に触れたときのこと。……悟は、あのときの君の表情、知らないんだよ。」
「やめて……っ、お願い……っ。」
傑「やめないよ。」
囁くように言ったその声が、あまりに静かで、あまりに深かった。
甘い香のように耳をくすぐりながら、女の理性を崩していく。
傑「私の知らないところで、悟に好きなようにされた君の声を聞いて、私がどれだけ狂いそうだったか……わかる?」
「傑……っ、ほんとに……っ。」