第4章 再会
悟「……汚しちゃったね。」
「うん……でも、嬉しかった。」
悟「僕も……少しは、取り返せたかな。宿儺に奪われた分。」
「……それでも、消えないものはあるよ。」
女が呟くと、悟はほんの少しだけ眉を寄せた。
悟「……だったら、それも全部、僕が背負う。だから……逃げないで。僕のそばにいて。」
その言葉に、女は頷いた。
静かに、確かに。
2人の間にあったのは、ただの欲情ではない。
奪われ傷つき、すれ違いながらも、それでも――
繋がりたいという強い願い。
悟が女を胸元に抱き寄せると、彼女はその腕の中で目を閉じた。
彼の鼓動が耳元で静かに鳴っている。
規則的でけれど、どこか切なく優しい音。
悟「おやすみ。」
「……うん、おやすみ、さとる。」
その夜2人は何も言わず、同じ夢を見た。
焦げるような痛みと、溶けるような愛しさが混ざった――
ただ、1つの夢。
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傑「ねえ、……宿儺のこと、話してもらえるかな?」
穏やかに微笑んだまま、夏油傑は問いかけてきた。
場所は、呪術高専の中庭。
風が心地よく吹き抜け、夏の終わりの午後を淡く染めていた。
蝉の声が遠くで響き、あまりに穏やかな空気に女はほんの少しだけ気を緩めてしまった。
「……呪霊の掃討中に宿儺が現れて……抵抗できなくて、そのまま……。」
傑「ああ、それは聞いてる。悠仁の体を使って、君に“した”ってことも。」
その口調は柔らかく、声に刺々しさは一切なかった。
ただ微笑を湛えたままのその瞳の奥に、冷たい水面のような静かな怒りが揺れていた。
傑「辛かったね。」
「……ありがとう。でも、もう大丈夫。ちゃんと終わったし――。」
傑「うん、うん、終わったね。宿儺との件は、ね。」
そう言った傑は、そこで言葉を1度切った。
そして、首を傾げてにっこりと笑う。
傑「……でも、君と悟が昨夜、“していた”こと、知ってるよ。」
女の心臓が凍りついた。
「え……。」
ゾクリと背筋が震えた。