• テキストサイズ

転生したら呪術廻戦の世界でした

第1章 転生と閉じ込め


「……知らない……知らないけど……あなたの名前も、顔も、全部知ってる……!」

涙がにじむ。

恐怖、混乱、羞恥、それに……

その存在感の圧に晒された心の芯が、なぜか甘く疼く。

甚「変な女だな。ま、どんな事情があろうと……。」

彼は首を鳴らした。

甚「出る方法は1つ。やるしかねぇってことだ。」

「まって……!」

手が肩をつかむ。

強い。

逃れられない。

けれど、それは暴力ではなかった。

強制的でもない。

ただ、彼の意志があまりにも真っ直ぐで容赦がない。

甚「オマエがしたくないなら、無理にはしねぇ。だがな——。」

彼が耳元に顔を寄せた。

声は囁きのようで、熱を帯びていた。

甚「オマエのその目。俺に“触れてほしい”って訴えてるように見えたぜ?」

「……っ。」

図星だったのかもしれない。

否定しきれない。

みみの中には確かに、転生という非現実の中で唯一確かな実在感を持つこの男に——

惹かれている自分がいた。

「私は……あなたを画面で、ただ見ていただけなのに……。」

甚「画面?なんだそりゃ……。」

「あなたは……私の、現実じゃないはずだったのに……。」

言葉を吐くほどに涙があふれた。

現実と虚構が混じり合う。

転生なんて夢だと信じたいのに体はこの部屋に囚われ、目の前の男は血肉を持って息をしている。

そして、その男は。

甚「夢でも幻でも構わねぇ。俺がいるなら、それが現実だ。」

囁いた彼の声に、みみの全身が震えた。

温かくも冷たくもない、ただ確かな体温のある指先が彼女の頬に触れた。

甚「選べ。ここで泣くだけか、それとも……俺と出るかだ。」

彼の瞳が刺さる。

逃げ場のない、閉じられた世界で。

みみは唇を震わせながら、その男の名を小さく呼んだ。

「……甚爾……さん……。」

それは、現実のものとして呼ぶ初めての声だった。

——この部屋は、彼と共に超えなければならない境界線だった。
/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp