第3章 緊張感
悟「その首元。隠しても無駄だよ。アイツの“痕”が、まだ残ってるはずだ。」
手元が震えた。
無意識に襟元を押さえる。
だが、その動きさえ見逃さないように悟の手がするりと伸びてシャツのボタンに触れた。
悟「やっぱり、つけられてるじゃん。」
シャツの隙間から、昨日宿儺の口づけた痕がうっすらと浮かび上がる。
キスマークのようなそれを見つめて、悟の表情がわずかに歪んだ。
悟「……何があったのか、全部話せ。嘘ついたら、わかるから。」
六眼に見つめられ、女は逃げ場をなくす。
「あいつに……無理やり……されたの。でも抵抗しても、私じゃ……。」
悟「……悦んだ?」
その一言は、まるで刃物のようだった。
痛くて冷たくて、深く突き刺さる。
「ちが、……違う。でも、あいつは…………私、混乱して。」
その言い訳は、自分でも情けないと思った。
けれど、悟は黙ったまま彼女のシャツをもう1つ外す。
そして、指先で痕に触れる。
悟「こんなもん、僕が消してあげるよ。」
そう囁いた直後だった。
悟の唇が、そこに落ちた。
熱く長く、まるで焼きつけるように。
「……っ、さとる……。」
悟「名前、呼ぶな。今は“先生”だろ?」
彼の声が低く、艶を帯びていた。
女の腕を強く引き寄せ、腰に手を回す。
悟「宿儺の痕が消えないなら、僕のを上書きすれば良い。簡単なことじゃん。」
「だめ……だよ。こんなの……おかしいよ……。」
悟「おかしくさせたのは、オマエだよ。」
唇が、首筋から鎖骨へと這うように降りてくる。