第3章 緊張感
2人の間にある傷は深い。
でも、それでも――
それでも、繋がりを手放したくなかった。
夕焼けが空を染める頃、4人はようやく街に戻った。
けれど、それぞれの胸には言葉にできない重さが残っていた。
その夜、女は1人ベッドの上で目を閉じた。
身体の奥に残る宿儺の名残が疼いていた。
けれど同時に悠仁の震える手の感触も、強く焼き付いていた。
――私が愛してるのは、誰?
答えの出ない問いだけが、胸の奥で何度も響いていた。
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夜も更けて、校舎は静まり返っていた。
空調の音と、遠くで虫の鳴く声だけが耳に届く。
悟「……今から報告、聞くから。」
五条悟にそう言われたのは、22:00を回った頃だった。
普段なら口調の軽さと裏腹に、どこか距離を保つような淡々とした雰囲気のある彼だったが今夜はどこか違っていた。
声に熱がこもっていて、それが妙に胸の奥をざわつかせた。
彼の私室に呼ばれるのは初めてではない。
けれど今日は部屋の灯りが落ち着かないほど薄暗く、まるで空気そのものが熱を帯びているようだった。
悟「昨日の件、ちゃんと話してくれるよね?」
ソファに座った悟は、サングラスを額に上げてこちらをじっと見つめた。
その双眸――
六眼が、まっすぐに女を捉えて離さない。
女は一瞬、言葉を詰まらせた。
「……呪霊の掃討は無事に終わった。宿儺が出てきて、戦闘は収束した。」
悟「宿儺が出てきて、終わった、ね……。」
その声は柔らかい。
けれど、ぞっとするほど冷たい熱が滲んでいた。
悟がゆっくりと立ち上がる。
女の前まで歩み寄ると、ふいに顎先に指を添えた。
細く長い指が肌に触れた瞬間、全身に戦慄が走る。
悟「その時、宿儺は……オマエに、何をしたの?」
女は目を逸らした。
だが悟の指が顎をすっと持ち上げ、無理やり目を合わせさせる。
悟「見せて。」
「え……?」