第3章 緊張感
午後の光が淡く地面を照らし、呪霊の残骸が静寂の中に崩れ落ちている。
空気は生臭く、遠くで瓦礫の崩れる音がしていた。
女はぼんやりと立ち尽くしていた。
足元には血の跡、焦げた地面そして宿儺が去った痕跡。
肉体を共有していた悠仁の顔が先ほどまでそこにあったのが信じられないほど、今は穏やかで幼く見える。
けれど彼の頬には、明らかに拭いきれない罪の色が浮かんでいた。
悠「……ごめん。」
たった一言。
それだけが、彼の唇から漏れた。
けれどその一言の裏には、幾層にも重なった苦悩と嫉妬が隠されていた。
宿儺が女を欲し、そして女もまた、それを完全に拒絶しきれなかった。
自分の肉体を使って、他の“誰か”が彼女を貪ったという事実。
それが悠仁の中に深く食い込み、声を出すのも苦しそうにしていた。
女は何も言えなかった。