第2章 葛藤
呪「ぐッ……!?」
悠「オマエみたいなやつが、みみに触れるなッ!」
呪霊が地面に叩きつけられ、黒い液体のような体液を散らす。
怒りに燃える悠仁の瞳は真っ赤に染まり、抑え込んでいた感情がついに爆発していた。
悠「俺は……俺はな、みみが泣くのも、怖がるのも見たくねぇんだよ!」
「……悠仁……。」
悠「弱くても、術式がなくても、そんなの関係ねぇ。俺は……オマエを、守るって決めてるんだ!」
呪霊は立ち上がろうとしたが、悠仁のもう1撃がその動きを止めた。
骨が砕けるような音。
次の瞬間、呪霊の身体は音もなく崩れ落ち霧のように消えていった。
静寂が戻る。
悠仁は息を切らしながら、振り返った。
悠「……ごめん。怖かったよな。もう、大丈夫だから。」
みみは黙って彼に駆け寄り、胸に顔を埋めた。
「ありがとう……本当に、助けてくれて……私、怖くて、なにもできなかった……。」
悠「良いんだよ。怖くて当然だろ。……でもな、俺がいる。伏黒や釘崎も、先生たちも。だから、1人で抱え込むなよ?」
(……悠仁……。)
不思議だった。
目の前の彼は、あの残酷な世界で生きるにはあまりにも優しくて、まっすぐで。
それなのに、なぜこんなにも胸が痛くなるほど彼に惹かれるのだろう。
——それも、彼の中に“両面宿儺”が宿っていると知っていながら。
森の中で、風が1度だけざわめいた。
それが結界の解除の合図だと2人はまだ気づかないまま、そっと身を寄せ合っていた。