第16章 交差する衝動
甚「“されてない”かどうかなんて、関係ねぇ。」
甚爾の言葉は強く、でもその声に混じっていたのは怒りだけじゃなかった。
焦りのような、苛立ちのような――
いや、それは。
嫉妬だった。
甚「他の男に、あんな顔させられそうになったのが気に入らねぇ。怖がった顔、震えた声、そういうの……全部、俺だけが引き出して良い。」
耳元に触れるような距離で囁かれ、女の肌がぞくりと粟立つ。
甚「オマエの体も、声も……心も。全部、俺のもんだって言っただろ。」
彼の声は、ひどく低くて甘かった。
それでいて――
独占欲の塊だった。
指が、また女の太腿を撫でる。
さっきまでの乱暴さとは違う。
ゆっくりと、慈しむように愛撫する。
「でも……もう……甚爾……私……。」
甚「もう終わりで良いなら、それでも良い。」
そう言いながらも、彼の手は止まらない。
指先が、まだ濡れたそこへ触れ、じんわりと押し広げられる。
指がゆっくりと沈み込むたび、体がまた快感の波に囚われていく。
甚「……でも、オマエ、気づいてねぇフリしてるだけだろ。」
「……な、にを……。」
問い返した声が震える。
心当たりが、ないわけじゃない。
甚爾がわずかに笑った。
甚「俺のこと、好きなんだろ。」
胸が跳ねた。
鼓動がひときわ強くなり、視線を逸らそうとするが――
男の手が女の顎を掴み、無理やり顔を向けさせる。
甚「否定すんなよ。今さら、そんな顔して。」
女の目には、確かにその想いが浮かんでいた。
言葉にはしてこなかったけど、気づいてしまった。
自分は、この男の匂いに溺れてる。
乱暴な手も、意地悪な言葉も全部ひっくるめて――
この男が、欲しい。
「……わかった。認める……。」
震える声でそう答えると、甚爾の目がゆるく細められた。