第16章 交差する衝動
鋼鉄のような腕に抱きしめられたまま、女は抵抗も忘れていた。
混乱と恐怖に包まれた心が、伏黒甚爾の体温にじわじわと溶かされていく。
あの男の下卑た声も、冷たい器具の感触も彼に抱かれている今は遠く霞んで消えていった。
キスが終わったかと思えば、彼の手が女の太腿に這うように滑り込んでいく。
乱暴なようでいて、その指先にはどこか確かな配慮がある。
触れられた場所が、火照るように熱くなる。
甚「こんなに震えてる。怖かったか?」
耳元に落とされたその声は低く、そして甘く濁っていた。
まるで獲物をいたわるように囁きながらも、その奥には男の欲望が確かに潜んでいる。
女はかすかに頷いた。
それを見た甚爾の瞳が、微かに細まる。
甚「……安心しろ。今から全部、俺が上書きしてやる。」
彼の言葉と同時に、実験台の上に女をそっと横たえる。
拘束具はすでに破壊されており、もはや彼女の自由を奪うものはない。
けれど、女は逃げなかった。
むしろ甚爾の指先が服の隙間から入り込むたび、わずかに体を震わせながらも受け入れていた。
ぬるりと服をずらす指が、彼女の胸元を露わにしていく。
首筋、鎖骨そして乳房へと唇が移る。
唇が柔らかな肌をなぞり時折、歯がやさしく甘噛みするたび女の喉から熱のこもった吐息が漏れる。
「あ……ふ、ん……。」
まだ震えが残る声だったが、確実にそれは快楽に染まりつつあった。