第15章 呪いに染まる
子「……父は、君に接触する寸前までたどり着いていた。だが――伏黒甚爾に殺された。あの男は、“魂の研究”に踏み込もうとした父を、排除したのさ。」
みみは無言で男の言葉を受け止める。
言い訳のようでいて、どこか本気で“正しいこと”を語っているつもりのような口ぶりだった。
子「父は残した。『彼女が異世界の出身者であるなら、この空間は“強制的に人間の本能を暴走させる呪術条件”をトリガーとして閉鎖せよ』と。」
男はあくまで淡々と告げた。
子「“人間的な最も深い接触”を通じて、君がこの世界の“倫理”と“快楽”の構造をどう理解するか。それを知りたかったんだ。父は、実験がしたかった。異世界の人間がどこまで呪力と感覚を適応できるか……。」
「それを……実験って……!」
子「君が特別だからだ。だから、ここにいる。それに、アイツが殺したことで、この実験の価値はさらに高まった。“あの男が手にしたかった存在”を、俺の手で解き明かす。それが父の、そして俺の復讐だ。」
映像が切れ、再び沈黙が部屋を支配する。
出口は、ある。
けれどそのためには、“条件”を満たさなければならない。
強制はされていない。
だが、“出たいなら”、応じるしかない。
じわじわと追い詰めるような、静かな暴力。
この部屋自体が、じっと彼女の精神を蝕んでくる。
(……甚爾、来てくれるよね……。)
不安と恐怖の中、彼女はただ自分を呼ぶ声を信じて目を閉じた。
その先に、どんな答えが待つのかさえ、わからないまま。