第15章 呪いに染まる
意識が戻ったとき、みみは暗がりの中にいた。
四方を白く無機質な壁に囲まれた空間。
ベッドと椅子、洗面所程度しかない密閉された部屋。
天井にはぼんやりとした照明が1つ、蛍のように光っている。
扉はある。
けれど、取っ手がない。
「……ここ、どこ……。」
頭を押さえて起き上がった瞬間、部屋の壁の1面に映像が映し出された。
カメラ越しのような視点で、ひとりの男が椅子に腰かけていた。
あのとき、路地裏で彼女を呪いの影から攫った──
“博士の息子”だ。
子「ようこそ、“条件式異空間”へ。出たいなら……“鍵”を満たすんだな。」
彼の声が、どこからともなく響いた。
感情は抑えているが、狂気と執着が滲んでいた。
子「ここは、父──“博士”が遺した空間の1つ。構造的には簡単さ。出入りは可能。ただし、“ある条件”を満たさなければ出られない。」
「……条件?」
彼女が問い返すと男は静かに頷き、淡々と説明を続けた。
子「父は、生涯を通して“異界存在”に執着していた。次元の裂け目、呪いの波動に触れる異物……君のような“異世界からの来訪者”こそ、父が生きて見たがった存在だ。」
「……っ、なんで……それを……。」
子「情報は残されていた。呪力構造、魂の周波、そして記憶の断片。君はこの世界の“人間”ではない。だが、“人間に近い”。だからこそ、興味深い。」
男は狂信者のような目で画面越しに彼女を見つめる。