• テキストサイズ

転生したら呪術廻戦の世界でした

第15章 呪いに染まる


甚「そう思いたいなら、そう思っとけ。……でも。」

彼はゆっくりと彼女の頬に手を伸ばし、親指で唇の端をなぞった。

甚「……オマエが欲しいって顔してたの、見間違いじゃねぇだろ。」

言葉が、身体の奥底に突き刺さる。

唇に触れるその指は強引なのに優しくて、熱が滲む。

「……また、そうやって……。」

甚「“また”って言うってことは……やっぱ覚えてんじゃねぇか。」

くす、と笑う彼の声は低く、甘く、危険で。

彼女は言葉を返せないまま、その指先から目を逸らすしかなかった。

遠くから、誰かが名前を呼ぶ声がかすかに聞こえた。

野薔薇の声――

けれど、彼女の耳にはもう届いていなかった。

甚爾の存在が空気を染め記憶を支配し、思考を飲み込んでいく。

──この再会が運命か、それとも罠か。

それを知るには、まだこの熱が冷めるのを待つしかなかった。





甚「……で? こっちで何する気だったんだ。」

甚爾が半ばからかうように言葉を投げかけながら、煙草に火をつけようとポケットを探る。

その横で、みみは俯きがちに歩いていた。

日差しはすでに傾き始め、路地の影が長く伸びていた。

そんなときだった。

路地の先、誰もいないはずの薄暗い空間に、ひとつの影が立っていた。

背の高い男。

黒い帽子を深く被り、顔の下半分は白いマスクで隠されている。

無言のまま、ただこちらをじっと見据えていた。

甚「……誰だ?」

甚爾が立ち止まり、軽く煙草の火を消す。

男はその動作を見ても微動だにせず、やがて低く抑えた声を発した。

子「伏黒甚爾……貴様に、会いたかった。」

甚「……あ?」

訝しむように眉をひそめた甚爾に男は帽子のつばを持ち上げ、その顔の輪郭をわずかに晒した。

痩せた頬に鋭い目。

だが、その視線には恍惚にも似た狂気があった。

子「“博士”……そう呼ばれた男の息子だ。貴様が、俺の父を殺した。」

空気が凍るような沈黙が落ちた。

みみは言葉の意味を咄嗟に理解できず、男と甚爾を交互に見つめる。
/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp