第15章 呪いに染まる
数日が経っても心と身体の奥に残るあの余韻は、まだ完全には拭いきれていなかった。
(あれは呪霊の影響……それとも、私の……?)
自分でも答えの出ない問いを胸に、みみはため息をひとつこぼしながら呪術高専の医療棟へ足を踏み入れた。
薄暗い廊下の先、いつものように緩やかにタバコの匂いが漂ってくる。
「硝子先生、いらっしゃいますか?」
軽くノックをしてからドアを開けるとソファに脚を組んで座った硝子が、ゆるく煙草をくゆらせながらこちらを見た。
硝「……ああ、来たの。ま、来るとは思ってたけど。」
「え……。」
硝子の鋭い視線と口元の皮肉な笑みに、思わずみみは足を止める。
何か、見透かされている。
そんな感覚が背筋を冷やした。
硝「座れば? 検査も一応するけど……どうせ、それだけじゃないんでしょ?」
「……えっと、その……前に起きた呪霊の件、もう完全に治まったのかどうか、気になって……。」
椅子に腰を下ろしながら、なるべく冷静に言葉を選んだつもりだったが硝子の眉がひくりと上がった。
硝「ふぅん。あの催淫系の術式ね……。まあ、呪力の乱れはすでに沈静化してるわ。検査しても異常値はない。」