第14章 交錯する夜
悟「良い子。すっごく、綺麗だよ。」
悟の声が耳を撫でる。
恵はそんな彼に目を細めたまま、さらにもう1歩、彼女を深く引き寄せる。
恵「オマエが泣いてても、俺は止めない。」
悟「……僕も。だって、もう逃げられないよ、みみ。」
両手で抱きすくめられた身体は、完全に熱に包まれていた。
シーツが擦れる音、汗が混ざる感触、重なる吐息と震えるまつげ。
空間のすべてが、彼女を甘く狂わせる。
「や、あ……っ、もう、無理……だめ……お願い……っ。」
途切れ途切れの声。
喉が焼けるようで、酸素が足りない。
それでも悟と恵は指を、唇を、熱を緩めない。
悟「もうすぐ、でしょ? みみの1番奥、もっと……触れたい。」
悟の唇が彼女の喉元にキスを落とすと恵の指が彼女の脚の付け根を愛おしそうになぞり、敏感な部分を見つけて甘く押し込んだ。
「あ……っ、ダメ……っ、恵……悟、わたし、また……っ!」
脚が跳ね、背筋が弓なりに反る。
叫びのような喘ぎと共に、みみの身体がびくりと大きく震えた。
悟が彼女の肩を抱き締め、額をこすり合わせながら優しく囁く。
悟「大丈夫。ちゃんと感じてる。ちゃんと僕らのものになってる。」
恵もまた、もう一方の手で彼女の指を握り細く息を吐いた。
悟「……綺麗だよ、みみ。こんな顔、誰にも見せないで。」
恵「誰にも……あげないからな。」
2人の手が重なり、みみの心臓の上に触れた。
鼓動は激しく、まるで壊れる直前の機械のようだった。
もう何度、限界を超えたかわからない。
それでもなお、彼女は2人に求められ、手放すことができなかった。
「……お願い、もう、これ以上は……。」
声は震え、目には涙が浮かんでいた。
それでも、腕は2人を拒まなかった。
3人の呼吸だけが響く静寂の中――
悟はそっと、彼女の髪を撫でて言った。
悟「……じゃあ、最後まで一緒に、いようか。全部、終わるまで。」
恵がうなずき、悟が微笑む。
そして、ふたり同時に彼女を抱きしめた。
みみはそのまま、彼らの胸に顔を埋めた。
重なった体温。
しがみつく指。
肌と肌がとけあうように――
夜の奥へと、再び沈んでいった。