第2章 葛藤
鉄扉を抜けた先——
そこには青空が広がっていた。
閉鎖空間の息苦しさはもうない。
鳥の声、風の流れ、遠くで聞こえる都市の喧噪——
どれもが、現実の感覚を持ってみみの体を包んでいた。
「……外……。」
声が震えた。
やっと、出られた。
地面に膝をつき、深く呼吸をする。
甚爾がそっと背中に手を添えた。
甚「よく、耐えたな。」
その一言に、涙がこぼれた。
狂気と快楽、閉鎖と愛欲の狭間で過ごした時間は、もう“夢”のようだった。
けれど。
次の瞬間、空を切り裂くような声音が聞こえた。
悟「——おい、みみ!」
「……え……?」
その声に顔を上げる。
白髪に蒼い瞳、六眼の男が空間を裂いて現れた。
制服の裾を翻し、真っ直ぐに駆け寄ってくる。
「悟……さん……?」
その名を呟いた瞬間、別の影が現れた。
長い黒髪を後ろで結い、柔らかく微笑む男——
夏油傑。
傑「大丈夫?だいぶ探したんだよ。無事でよかった。」
「え、傑……?先生、なの……?」
混乱が襲う。
原作では敵だったはずの彼が今は呪術高専の制服を纏い、“教員”としてそこにいた。
「……どういうこと……?」
悟が眉をひそめる。
みみは思った。
——この世界は、もう原作じゃない。
自分が来たことで、歯車が変わり始めた。
ならば——ここで、“生きる”しかない。
まだ術式は使えない。
戦えない。
でも、この世界には彼女を強く惹きつける男たちがいて——
彼女自身にも、世界を狂わせる力があった。
物語は、まだ始まったばかりだった。