第13章 籠の中の鳥
恵「……みみ、もっと聞かせて。オマエの声……全部、俺のにして。」
恵の低く囁くような声に、みみは目を潤ませながら頷くしかできなかった。
その夜、五条悟が部屋から戻ってきたのは、ずいぶんと時間が経ってからだった。
彼はドアの前で立ち止まり、眉をひそめた。
部屋の中から漏れてくるかすかな熱と、すすり泣くような甘い声。
静かに溜息をつくと彼はドアに背を預け、目を閉じた。
悟「……ったく、僕がいない間に何してんだか。」
けれど、その声には怒りよりも滲んだ独占欲があった。
悟(次は、僕の番だよ。)
「……っ、恵……そんな、そこ、ダメ……。」
みみのかすれた声が、部屋の奥で熱を帯びて響いていた。
伏黒恵の肩越しに見える彼女の頬は紅潮し、涙すら滲ませている。
絡みつく手、暴かれた肌。
交差する熱と熱の中で、羞恥や理性はとっくに溶けていた。
恵の指先が彼女の脚の間をなぞるたび身体が跳ね、息が引きつる。
甘く噛みつくような口づけと、吐息と濡れた音だけが部屋を満たしていた。
恵「みみ……可愛い、声……たまんねえ。」
低く掠れた囁きに、みみは震えるように首を振る。
「やだ、そんなの、だめ、見ないで……っ。」
恵「全部、見せて。俺だけに……オマエの全部。」
恵が顔を埋め、首筋に唇を押し当てた――
その時だった。
カチャリ。
ドアノブが回る微かな音。
みみが一瞬、ぴくりと肩を震わせる。
「……っ、誰か……。」
その瞬間、扉がゆっくりと開かれた。
悟「ただいまー……って、あれ?」
その声。
部屋に戻ってきたのは――
五条悟だった。
静かに、けれど確実に重く沈む空気。
悟は開け放たれた扉の向こうに立ち、ソファの上で絡み合う2人を無言で見下ろしていた。
サングラスの奥、瞳がゆっくりと細められていく。
悟「……へぇ。これは……どういう状況かな?」
その声に、みみは反射的に恵の胸に身を隠すようにして身をすくませた。
羞恥と動揺、そして微かな罪悪感が混ざり合う。
「悟……っ、これは――。」