第12章 甘い呪縛
悟「それで“無事”って言えるの?」
低く、抑えた声。
悟がこんな声を出すのを、彼女は初めて聞いたかもしれない。
「ごめん……ずっと、そばにいてほしかった……悟……。」
その言葉に、彼はようやく立ち上がった。
そして、ベッドの縁に手を置き顔を近づける。
悟「僕が、守るって言ったのに。約束したのに。僕は何をしてたんだろうな……。」
「そんな……違うの。悟が悪いわけじゃ──。」
悟「じゃあ、誰が悪い? 宿儺か? その呪霊か? それとも──僕が、無敵じゃないことか?」
まっすぐに見つめられて、返せる言葉がなかった。
でも、そこには怒りでも嘲りでもなく……
ただ深い、深い後悔と自責の光だけが宿っていた。
悟「僕はもう、離さない。次は1秒だって、オマエから目を離さないから。」
「悟……。」
彼女の瞳に涙が滲む。
悟はそっとベッドに手を伸ばし、彼女の髪を撫でた。
悟「おかえり。……本当に、よく帰ってきてくれた。」
それは、どんな言葉よりも胸に染みた。
熱を帯びた涙が、頬を伝っていく。
──“快楽に身体が慣らされると、術式が解かれても1部が残る”──
家入硝子にそう告げられたのは、術式解除から2日後のことだった。
硝「催淫系の術式は厄介なの。脳と神経系に残った“快楽の痕跡”が自然治癒するまで、しばらく時間が掛かるわ。」
それからというもの彼女は極力、自室から出ないよう心がけていた。
他人の視線にさらされれば、自分が“おかしく”なってしまいそうだったから。
だけど──
それでも、身体は正直だった。