第12章 甘い呪縛
野薔薇が彼女に羽織る布を渡し、虎杖は言葉少なに抱きかかえたまま1歩踏み出した。
夕暮れに染まる東京校。
戻ってきた一行に、家入硝子がすぐさま駆け寄る。
硝「ひどい有様ね……早く、診るわよ。虎杖、横になれるよう運んで。」
悠「……うん。」
その背中を見送りながら、伏黒は小さく呟いた。
恵「あの呪霊、みみに何か……呪力を残してたりしてないと良いけどな。」
野「……それ、フラグ立ててないでしょうね?」
野薔薇が眉をひそめたが、彼の目は真剣だった。
──呪霊の術式。快楽と支配による呪縛。
もしそれが、彼女の中にまだ残っていたとしたら──。
女が眠りにつく頃、ベッド脇で虎杖はずっと座っていた。
その手は、彼女の手をそっと握っていた。
悠「……もう絶対、誰にも……触らせない。」
小さな声だった。
だが、それは確かな誓いだった。
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重いまぶたが、ゆっくりと開いた。
天井の光はやわらかく、消毒の匂いと布の肌触りが鼻をかすめる。
ここは──
高専の医務室。
自分がベッドに横たわっていることに気づき、女はゆるく頭を動かした。
悟「お、やっとお目覚め?」
──その声に、心臓が跳ねた。
声の主はベッドのすぐ横、椅子に座っていた。
白髪に黒のタートル。
目元にはサングラス──
けれど、サングラスの奥で彼の視線がじっとこちらを見ているのを、はっきりと感じた。
五条悟。