第12章 甘い呪縛
宿「安心しろ、もう終わった。」
彼の腕は熱く、力強かった。
けれど、その視線には……
わずかに怒りとも、焦りともつかぬ色が混ざっていた。
宿「オマエの身体……まさか、奴に最後まで……?」
宿儺の問いかけに、女はかすかに首を横に振る。
それだけで彼の表情が和らぎ、代わりに優しく抱きしめられた。
宿「よく耐えたな。……だが、これ以上、誰にも触れさせん。」
その腕に抱かれながら、女の頬に涙が伝う。
恐怖からの解放なのか、それとも宿儺に向けた想いか──
自分でもわからなかった。
だが確かに、彼の言葉が今は何よりも温かかった。
血の霧が消え、呪霊の残骸が静かに崩れ落ちていく。
廃墟の中には、ただ宿儺の圧倒的な気配だけが残っていた。
宿「……くだらん奴だったな。貴様に触れたこと、それだけがコイツの“罪”だ。」
宿儺はゆっくりと女を抱き上げた。
その身体はまだ熱を帯び、快楽の余韻に微かに震えていた。
だが彼の腕に抱かれていることが、不思議と安心を与えてくれる。
「……宿儺…………?」
その小さな声に、彼は視線を落とす。
瞳には相変わらず猛獣のような光が宿っていたが、その奥にふと傷ついたものに触れた“怒り”と“執着”が滲んでいた。
宿「……すぐに、小僧に戻る。オマエはまだ何も言わなくて良い。」
低く囁くと、彼はその額に静かに口づけた。
それはまるで、“印”のようだった。
宿「だが忘れるな。この体の中に俺がいる限り……貴様はもう、俺のものだ。」
その言葉と同時に──
宿儺の気配が、すうっと身体から引いていく。