第11章 離れゆく心
ご飯が出来たのか運んできてスプーンを持たせられる。
正直、食欲がない。
でも食べないと副隊長が食べれなそうなので、少しずつ口に運ぶ。
ゆっくり何口か食べてるうちに隣の彼は食べ終わり、無理せんでええでと言ってくれた。
入りそうもないのでスプーンを置くと、副隊長は片付けてお風呂を沸かしに行った。
戻ってきてソファに座った彼に抱きつきたいが、我慢して横になる。
あの時みたいに離せと言われたくない。
「神谷…?」
「やだぁ…。」
「え、何が?」
「お姉ちゃんと付き合ってるの?だから、私のことは苗字で呼んで、お姉ちゃんは名前で呼ぶの?」
こんなこと聞きたくないのに…付き合ってるって言われたくないのに…なんで聞いてしまうんだろう。
耳を塞いで目を固く瞑った。
力が入らない手は簡単に耳から引き剥がされて、耳元で囁いてくる。
「付き合ってへんよ。誰とも付き合わへんし。君のこと名前で呼んだら何するかわからへん。2人のこと神谷って呼ぶんも、ややこしいやろ?」
それでも嫌だ、なんで姉のことを…言いたくて仕方ないが、グッと飲み込んだ。
うざいって言われたくない、しつこくしたらダメだ。
目を瞑ったままズボンを抱き締めた。
「ほんで、それなんなん?なんで僕の服取るん?」
「匂い…。」
え?と聞き返されたが、もう答えるのはやめた。
副隊長も特にそれ以上は聞くこともなく、膝掛けを掛けてくれる。
スマホを弄り出した彼を尻目に縮こまって震える。
「薬切れてきた?寒い?風呂どないしよか…。」
さすがにこんな汗塗れでは寝たくない。
鎮痛剤を飲むと暑くなって汗をかいてしまう。
「入りたいです。」
「そうやよな、ちゃんと乾かさなあかんで?」
はいと頷き、自身を抱き締めて寒さに耐えた。