第11章 離れゆく心
「璃沙〜、宗四郎くん知らない?」
執務室に入ってきた姉が相談したいことあったんだけどなぁと保科副隊長を探している。
やっぱり2人は元の関係に戻ったのだろうか。
副隊長はどうか知らないが、名前で呼んでいる。
「知らな…あ、どっか行くって、さっき出ていったけど…。」
「嘘っ!まだいるかな…ついていこ…。」
え、やだ…。
慌てて執務室を飛び出すと姉もついてくる。
確か車でどっか行くって言ってたはず…。
すぐに駐車場に向かうと隊の車両に乗り込もうとしている副隊長を見つけた。
「ほ…。」
「宗四郎くん!」
姉に負けた…すぐに姉は相談があるからついていっていいか聞く。
私も行きたいと言えば困ったように眉を下げた。
「え〜僕めっちゃモテモテなんやけど…でも、2人もいらへんし、相談ある言う璃子が来るか?」
な……え?璃子?前までさん付けだったじゃん。
「やった!デートだね!」
相談があるのなら仕方ないと思うが、少し前まで妹の彼氏だった人になんてことを言うのだ。
そうやなと笑う副隊長も副隊長だ。
お気を付けてと言って執務室に逃げた。
結局、姉は姉だった、私から全て奪っていく。
しかもあれは、悪気があってやっているわけではない。いつも、自分がしたいように行動しているだけで、深くは考えていないのだ。
タチが悪い。
昔のように逃げたくなった。
適当に誰かを引っかければ、この虚しさはなくなるだろうか。
鳴海隊長のところへ行けば、満たされるだろうか。
いや、どこにも行かない。一生あの人だけを想って生きると決めた。
大丈夫、私は大丈夫なのだと、何度も自分に言い聞かせた。
怪獣を根絶やしにする、これからはそれだけを考える。
子供たちの未来の為に。
執務室で作業してても2人が帰って来ないのはわかっていた。
それでもここに居続けるのは何故だろう。
どんなに考えないようにしても、ずっと頭の中をぐるぐるする。
大丈夫、これも今だけだと言い聞かせて、仮眠室に向かった。
仮眠室のベッドに横になっていると暑くて下着姿になってしまった。
なんだろう、異様に身体が熱い。
もう何も考えたくない、そう思って目を瞑った。