第10章 悲しみの中で
鳴海隊長に行ってこいと背中を押された。
「話し合えと言っただろう?」
「だってもう、話し合える状況じゃ…。」
なんでさっき、鳴海隊長の背中に隠れてしまったんだろう。
君なら大丈夫だと笑顔を向けられて、慌てて副隊長の後を追いかけた。
声をかけても振り向いてくれないし、止まってもくれない。
「保科副隊長!……宗四郎、好き。」
背中に抱きついて想いを伝えても止まってくれなくて、ずるずると引き摺られる…。
抱きついてるのだから、止まってくれても…。
足に力を入れて踏ん張っても意味がないので、その細い足にどれだけ筋肉がついてるのだと疑問に思った。
もしや、足の筋肉の問題ではないの?これって。
そんなことを考えていると離せと小さい声が聞こえた。
「もう少しちゃんと話そ…前はあのまましちゃったからあまり話せなかったでしょ?」
「話すことなんてあらへん。はぁ……めんどいわ君。振られたんやから、いつまでも執着せんでくれん?うざい。」
は?何よ、あなただって鳴海隊長に牽制ばっかしてるじゃん。
なんで私ばっかりこんな振り回されるの…?
私が好き過ぎるのがいけないのかな…宗四郎は私と同じくらいの気持ちがあるわけじゃないんだ…。
「……バカっ!!」
「は?お前、上官に向かって……。」
全力で走って逃げて、もう話なんて出来ないと思った。