第10章 悲しみの中で
他の隊員と話し始めた彼を遠目で見て、声をかけられたのでついていった。
「なんで別れたんだ?」
みんなとは少し離れたところに連れて来られて、適切な距離を取った鳴海隊長に真っ直ぐ見つめられる。
「ナンバーズです。心身に大きな負荷がかかる為、この先どうなるかわからないからと…。」
「ボクだってレティーナを使ってる。そんなの、言い訳にしかならんだろ。お互い想い合ってるのに、別れる必要はどこにある。」
他の女のとこに行く口実だろと近付いてきて、手を握られた。
人それぞれ違うように、鳴海隊長と保科副隊長もそれぞれ違う考えを持っているのだろう。
それをどうこう言える立場ではない。
「何度も嫌だと言いました。でも、無理でした。だからもういいんです。私はただ彼を好きでいるだけです。昔みたいなことはもうしない、あの人だけを想って生きていきます。」
「……辛すぎるだろ、そんなの。もっとちゃんと話し合え。じゃないと、ボクはなんの為に君を手放したんだ。」
何も言えなかった。なんて言ったらいいかわからなかった。
話し合えと言われても、もう彼にはそんな気がないようだし、なんの為にと言われても、あなたのことはもう傷付けたくないから…。
「やから、鳴海隊長?手ぇ出さんでください言いましたよね?」
「元はと言えば璃沙は第1のもんだ。」
「いつまで名前で呼んでるんです?それと…第1とか第3とかどうでもええです。この子に手ぇ出されたら僕が困るんで。」
いきなり現れた保科副隊長は、私の手を握っていた鳴海隊長の手を振り払い間に入る。
そんなことされたら、そんなこと言われたら…どうしていいかわからなくなる。
私の言葉は聞いてくれないくせに、なんでそんなこと言うの?
副隊長の背中から移動し、鳴海隊長の背中に裾を握りながら隠れる。
「は……嫌や、なんでそないなことするん?…いや、なんでもない。もう恋人でもなんでもないんや、好きにしたらええ。」
わからない、あの人がわからない。
離れていく、いつもよりも小さく見える副隊長の背中を見つめた。
付き合わないけど、他と付き合うのは嫌?
恋人でもない人が縛る権利はないんですよ?