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未来の為に【怪獣8号:保科宗四郎】

第2章 過去を抱き締める


「……私が一番抱かれたい人は、すでに誰かのものでした。」


言わない、言えるはずなんてない。

姉の恋人に好きなんて言えるはずもない。


ただの色恋が原因かと呆れるだろうか。

それでも彼には"ただの"なんて言って欲しくなかった。

初めて人を好きになり、この人の為なら死んでもいいとさえ思えた。


誰かを好きになって結婚して子供が生まれて、その子供を残して死にたくないと思っていた。

私のように次の子供たちにはそんな思いはさせたくないと、怪獣を根絶やしにすると決めた。

でも、現実を見せつけられてはどうしようもなかった。

私にこの国を守れる程の力はない、未来の子供たちを幸せにする力なんてない。


それでも、この人の子供が欲しいと思い、この人やその子供の為なら、私の命なんて簡単に投げ出せる。

子供を残して死にたくないと思いながら、その子の為なら死ねるのだ、この人がいるから。
この人は死なない。


こんなことなら、鳴海隊長の告白を断らなければよかった。

あの人なら私との子供が欲しいなんて思いはないだろうから。

ただ欲を発散させたかっただけだろうから。


保科副隊長はただそうかとだけ言って私を抱き締めた。

欲しい、この人が欲しい…。


彼は一度も"ただの"とか"そんなことで"なんて言わなかった。

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