第2章 過去を抱き締める
あれからまた半年近くが経ち、立川に来てから1年が過ぎようとしていた。
自主トレーニングをしなくなり、訓練すらサボり気味。
いろんな男を引っ掛け寂しさを埋めていたが、ただ虚しいだけだった。
姉すらもそんな私から目を逸らした。
だが、あの人への想いは消えない、消させてくれない。
私の中身を見てくれる、男と身体を重ねる度に叱ってくれる。
あの人だけが私自身を見てくれるのだ。
サボらず訓練に参加した時は頭を撫で褒めてくれる、そんな当たり前のことを褒めてくれる。
あの人は優しさの塊だ。
「このままやと除隊なるで、ええんか?前はオーバーワークするくらい真面目やったやないか、何がお前を変えた。」
「……もう辞めるのでどうでもいいです。」
「ええから。何があった、言いや。僕は全部受け止めたる。なんでお前はそないに自分を追い詰めてる?」
あぁ…誰かにそう言ってもらいたかった、私の全てを知って、全てを受け入れて欲しかった。
寂しかった。
だけど、どうしてよりによってあなたがそんなことを言うの?
私の気持ちには答えられないくせに。
執務室に静寂が流れる。
次第に私は頬を濡らしていった。
「中学の時に両親を失い、寂しさを埋めるように男を求めてました。それでも入隊してからは改めて、訓練に勤しんでいましたが…いましたが……。」
この先を言うのが怖い、受け入れてくれるはずもないのだ、私の気持ちなんて…。
私の目をじっとその赤紫で見つめて続きを待っている。