第10章 悲しみの中で
ギプスも取れて肋もほぼ痛みがなくなった頃、宗四郎は識別怪獣兵器10を使用することになった。
「璃沙…僕ら別れへん?」
「え…?」
突然の彼の言葉に理解が追いつかなかった。
今まで普通だった、普通に仲が良かったし、キスだって毎日何回もしていた。
「ご、ごめんっ、セックスならこれからいっぱい出来るから!え…やだ…。」
「セックスとかの問題ちゃうねん。璃沙のこと好きやし、愛しとる。やから、別れたいねん。ナンバーズなんて使うてたら何があるかわからへん。」
宗四郎は自分が死ぬと思ってるの?
ナンバーズを使えば身体に負担がかかる。
それなら、ナンバーズなんて使わせない、私は宗四郎とずっと一緒にいる覚悟であなたのところに戻ってきたのに。
訓練室でスーツを着たまま宗四郎に抱きついた。
汗なんてどうでもよかった。
この人を今手放してしまったら、もう一生手に入らない。
そんな人なんだ。こんな私がこの人と付き合えたことは奇跡…だから、離したくない。
「鳴海隊長と付き合うたらええ。いろんな男と関係持つのはやめとき。」
なんでそんな酷いこと言うの?
どうせなら誰とも付き合うなって言って…鳴海隊長だけはダメだって、他の男だったら誰でもいいって。
振る相手に優しくするのはいけないんだよ…絶対に離さない。
背中に回した手に力を込めて爪を立てた。
スーツだから普段よりは痛くないだろう。
「わかった。今日が終わるまでは僕を好きにしてええ。せやけど、明日なったらただの副隊長と隊員や。」
「……嫌。」
「嫌やない……そうか、わかった。璃子さん抱いてくる。」
手を離して胸を力いっぱい殴り続けた。
「脱いで!スーツダメっ!」
そう言えば黙ってスーツを腰まで脱いで、無表情でどこかを見ている。
一度インナー姿の宗四郎に抱きついて、手を引いて訓練室を出た。
スーツから隊服に着替えて基地を出る。