第10章 悲しみの中で
あの後、日比野の処分は保留になった。
そして日比野を含めた新人が各地に散らばった。
立川が襲撃を受けたことで基地としての機能を75%失い、新人を育成することが出来なくなったからだ。
新人の中でも、特に優秀な新人たち。
四ノ宮、市川、古橋、出雲、神楽木が別の基地で力を蓄えている。
「副隊長、なんで神谷を休ませてあげないんすか?」
中之島が両腕が使えず何も出来ない私を毎日基地に連れてくる彼に質問する。
「なんでってそりゃあ…家にいてもなんも出来んからやろ。なら、誰かとおった方がええやん?」
確かにそうだ、家に1人でいても何も出来ない。
いや、多少は出来ますけどね。
テレビを見たり寝たり……何にも出来なかった。
「あれ、神谷ってお姉さんいたよな?一緒に住んでないのか?」
頷いた。住むわけがない、昔から嫌いだったんだ。
私がこの状態でも未だに顔を見せない。
姉が怪我をしているのかどうかも知らない。
「璃沙〜〜!」
…って、噂をすれば…。
「神谷ストップ。」
抱きつこうとした姉を宗四郎が止めた。
そうだ、戦闘中ずっと副隊長って言ってたら、あの後怒られたのだ、宗四郎と呼べと…。
姉は謝り、抱こうとした腕を引っ込めた。
この腕で抱きしめられたらたまったもんじゃない。
なんで来てるのか、生活は大丈夫なのかと聞いてくる。
「僕がちゃんと見とるから。」
「そう…副隊長が見てるなら安心だね!」
姉が私に気を使ってるのが伝わってるくる。
今、名前で呼ぼうとした。