第9章 心は傍に
「宗四郎、日比野…どうなるかな。」
治療を受けて眠ってしまい目が覚めると、すぐ近くに宗四郎がいた。
近くに人はいないようだし、名前で呼ぶ。
俯いたままの彼は答えない、起きているとは思う。
見つめていると動き出し、私の上に覆い被さった。
ちゅっ…と触れるだけのキスをしどこかへ行ってしまった。
日比野を取ったのも正隊員にしたのも彼だった。
違和感を感じていたから近くに置いたのだろう。
でもきっと、一緒にいるうちに明るくてひたむきな彼に惹かれていたんだろう。
でもね、あなたが惹かれたあの男は、この基地を、みんなを守ったんだよ。
あなたが日比野を正隊員に推してなければここにいなかったかもしれない、私たちはみんな死んでいたかもしれない。
起き上がり辺りを見渡す。
基地は跡形もなく崩れている。
「宗四郎…。」
この喪失感を払いたくて彼を探した。
斑鳩と一緒にいるのを見付けこちらに歩いてくるので、そのまま待った。
何か話しているようだ。
「まだ寝ててええで。」
「宗四郎……腕痛いぃ…。」
彼を見ていると何故か涙が出てきてしまい、咄嗟に腕が痛いせいにした。
「もぉ、しゃーないなぁ、そんな泣かんでええから。」
そないな格好で出歩いたらあかんと隊服を脱ぎ私の肩に掛ける。
両腕を骨折していて服を着ることが出来ない。
「宗四郎もダメだよ…ミイラみたいじゃん。」
「アホ、君程やないわ。」
肋も折れていて打ち身等があるので、上半身はほぼ包帯がぐるぐる巻きになっている。
それは彼も変わらない。
「あれからどのくらい経ったの?何かあった?」
「1日は経っとるな。カフカはもう本部に移送された。」
そっか…と呟き頭を彼の肩に預けた。
「あ、斑鳩、内緒やで?」
私の頭を撫でなから斑鳩に話しかけている。恐らく私たちのことだろう。
斑鳩はなんとなく知っていたらしく、わかってますと答えていた。
確かに小隊長の人たちは知っているかもしれない。
いや、ほとんどの隊員が知ってるかも…。
「帰ろか。君がここにいても何も出来へんやろ?」
両腕が使えないとなれば、復興作業も何も出来ない。