第9章 心は傍に
「璃沙…なぁ!璃沙、起きてや!!」
愛しい声と頬を撫でられる感覚に気付いて目を開ける。
どうやらまた気を失ってしまっていたようだ。
「終わっ、たの…?」
「そや、終わったで。倒したで。僕らの勝ちや!」
「ふふ、よかった…。」
一瞬だけ唇が触れると横抱きに抱えられ、みんながいるところに向かっていく。
あれ、副隊長も相当な怪我を負っていたはず…それなのになんともないように私を抱えて歩くから、指すら動かない身体を彼に預けた。
四ノ宮のところまでいくと降ろされ腰を抱きながら、彼女に手を差し伸べた。
手を取った四ノ宮を立たせ、後ろに来た亜白隊長に敬礼をする。
私もしようとしたが腕が上がらず、頭を下げた。
そうだ、腕折れてるんだった。
休まずに余獣の殲滅にかかろうとしている副隊長にお前も休めとチョップをする亜白隊長。
「しゃーない、ここはお言葉に甘えて休むとするか……。」
腰を抱く彼により一層密着した。
空にとんでもない大きさの球体が浮かんでいる。
気付いた亜白隊長や四ノ宮もすぐに振り返る。
周りの音は何も聞こえなくなっていた。
宗四郎の鼓動だけを感じる。
「…宗四郎、愛してる。」
もう無理だと思った、あれはきっと爆発してこの基地を吹き飛ばす。
彼は何かを必死に考えているようで、聞こえていないみたいだった。
私が紡ぐ最後の愛の言葉、聞いてて欲しかったな…。
「人間、この勝負、引き分けだな。」
頭部だけになった本獣がそう言っていた。
次の瞬間、日比野が駆け出していった。
「カフカ…!?戻れ!!お前が行ってもどうにもなら…。」
日比野の解放戦力1%とは思えない速度を見て彼は言葉を止めた。
日比野は怪獣8号に変身し、咆哮する。
日比野が踏み込むと地面が割れ、その振動で軽く体勢を崩す。
そして日比野は、拳を振り翳しながら跳んだ。
空に浮かぶあの球体…余獣爆弾を押し上げていき着地した。
「総員!!その場に伏せてシールド全開だ!!」
副隊長が私の頭を抱きながら伏せてシールドを全開にする。
爆発と共にシールド全開でも吹き飛ばされそうになる程の風圧が全身を襲い、伏せながら必死に耐えた。
衝撃が止み、日比野に銃を突きつけた亜白隊長は彼を拘束した。