第9章 心は傍に
小此木の声が聞こえる、私と副隊長を呼んでいる。
泣いてるのかな、泣かせたくないな。
必死に叫ぶ小此木を安心させようと口を開こうとするが、なかなか反応が出来なかった。
「小此木ちゃん……大丈夫…生きとんで。璃沙も一応…。」
副隊長の前に抱えられるように座り込んでいた。
腕が…咄嗟に腕を前にして心臓を守ったので、折れてしまったようだ。
両腕はさすがにきついが、痛みを無視して近くに転がった刀を手に取る。
銃は少し離れているところにある為、起き上がろうと身体に力を入れると肋に痛みが走った。
一番下だろうか…脇腹近くが痛い。
まだ終わっていない、起き上がろうと身じろぐ。
「璃沙、君はもう休んどき。後は僕がやる。」
「まだ、戦えます…。」
「……しゃーない、死ぬ時は一緒やで?基地を守り切るぞ。」
「了。」
手を貸してもらいながら立ち上がり、外の状況を聞く。
避難も対余獣も大丈夫なようだ。
「ほな僕も、最後まで務めを果たさんとな。」
「助力致します。」
「けどもう、戦えるような身体じゃ…。」
振り翳された拳を躱し2人で攻撃を仕掛ける。
刃が通り切らない、浅い傷はすぐに修復されていく。
2人で別々の方向に駆け出した。
「もうわかった、刀(それ)では俺は倒せない。」
距離を取りながら動きを見ていたが、地面を蹴って跳び、本獣の頭上から身体全てを使って刀に力を込めた。
刀は本獣の頭に突き刺さる。
「刀(これ)は彼に教えてもらった。私を見付けてくれた。あの人を否定するということは、私を否定すること。私はお前を…討伐する。」
至近距離で何発も撃ち込んでいく。
だがすぐに力が入らなくなり、銃は落ちていった。
近付いてくる手に気付いていたが、折れた骨が悲鳴を上げて反応が遅れる。
そのまま掴まれ遠くに投げられてしまった。
地面に打ち付けた痛みで意識が遠のく。