第9章 心は傍に
次の日の訓練が終わり、万全ではないのだから早く帰れと言われたが、帰ったフリをして資料室に入り浸っていた。
日比野が来た頃資料室を出てオペレーションルームで暇を潰していた。
トレーニングルームにいると見つかってしまいそうだったから。
別に帰ってもいいのだが、ここにいたらいつ会いたくなったとしてもいつでも会いに行ける。
まあ、すでに会いたいのだが…。
と思っていると抑えきれずに彼の居場所をモニターで確認して駆け出した。
今は日比野と一緒にいるし、口うるさく言われることはないだろう。たぶん…。
「1%のやつが戦力になるなんて思ってへんわ!!調子乗んなボケェ!!」
なにしてんだ…日比野に締め技を決めている。
トレーニングルームの入り口近くで姿を隠し2人の会話を聞いていた。
いきなり静かになったかと思えば、静かで優しい彼の声が聞こえてきた。
「けどまあ、1%くらいは期待しといたる。」
自然と頬が緩む。
普段は厳しい彼だけど、本当は誰よりも優しい。
そんなあなたが私は大好きだ。
庁舎に戻るという声が聞こえて慌ててあたふたしているうちに、トレーニングルームから出てきた彼に見つかってしまった。
「……僕、帰らしたはずなんやけど。」
「すみません……宗四郎と一緒にいたくて…。」
彼はしゃーないなと嬉しそうに笑い私の手を引いていく。
執務室に戻ると誰もいなかったので触れるだけのキスをした彼は自身の席に座り、パソコンと睨めっこをし始める。
「怪獣8号。奴に感じた人間のような違和感。加えて、人語を操り人に化ける9号…怪獣に何が起きてる……?」
顎に指を添えてパソコンの画面を見たまま考える彼に近付き、私も一緒に画面を見た。
8号の詳細が映し出されている。
「強くならないと…子供たちの笑顔の為に…。」
「子作りする?」
そういう雰囲気じゃなかっただろうと目を細めて彼をじとっと見つめた。