第2章 過去を抱き締める
次の日の訓練終了後すぐに呼ばれ、執務室へ向かう。
執務室の入り口で失礼しますと声をかけると手招きをされて、副隊長が座る横に立った。
「っ…うっ!」
こちらを向いたかと思えばいきなり手を引かれ、額がぶつかった。
頭割れそう…。
「これはキスしようとした罰や。叩いたんは…僕が手上げるわけにもいかんし、当分、勤務時間外の自主トレーニング禁止や。」
わかったかと未だに額が合わさったまま至近距離で赤紫に睨まれる。
異動や除隊ではないんだ。
「嫌です。隊員である以上、私は強くなりたい。」
「君、充分強いやろ。」
どこが強いと言うのだ、1年半も経っても入隊時と変わらない、そんな奴が強いわけない。
額が離れ腕も離された為、上体を起こし彼を見ると、額が赤くなっていた。
どうして罰だというのに、あなたまで…。
帰ってもいいと言われたので失礼しますと言って慌てて医療棟へ向かう。
氷嚢をもらって急いで執務室に戻った。
「なんや、まだ用あるん?」
「……失礼します。」
彼に近付き、額に氷嚢をあてる。
驚いた彼は私を見上げてきた。
「赤くなってるので冷やしてください。」
「…それは君もやろ。」
腕を掴んで無理やり私の額に近付けてくる。
相当な力を入れているのに敵わない。