第6章 別の人
未だに腕を掴まれているが、自身の机の上にあるスマホに目線を移した。
弦から連絡がきてるかも。
手を伸ばして取り開いてみると案の定きていたが、スマホを取られてしまい何も出来ない。
「まだ僕と話しとるやろ。」
もう話したくないのだが…。
「私とは絶対生でしなかった。」
みんながいるのにも関わらず、拗ねたように呟く。
「当たり前やん、僕との子供欲しいん?」
いらないなんて言ってない、付き合う前からあなたのと子供は欲しいと思っていた。
すぐにというわけではなかったけど、そんな未来を想像出来た。
「約束したのに…。」
「ほんまにごめん。」
「離してください。」
嫌やと余計力を入れて引き寄せられる。
「璃子さんは…「やめて!いっつもお姉ちゃんばっかり特別扱いする!」…ごめん。」
上官になっても姉への対応は変わらないし、名前で呼ぶし敬語だし…寝たことがある人をそんな風に扱って、彼女が不安にならないことなんてあるのだろうか。
「すみません、気にしないでください。もう関係ないので……っ!」
ぐいっと腕を引っ張られてつきそうな程顔が近付く。
だがすぐに立ち上がり執務室を出ていく。
腕が痛い…。
「あの、逃げないので離してください。痛いです…。」
彼は謝りながら掴んでいる手を下ろし、手を握った。