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未来の為に【怪獣8号:保科宗四郎】

第6章 別の人


だんだんと頬が緩んでいく彼女を見ているのが幸せだった。


その後の会議で僕は日比野カフカを候補生として取り、鍛えることにした。


新人の入隊式の朝、制服に身を包んだ彼女を見つけ影から見ていると、誰かと電話をしているようだった。


「弦、もう式が始まるから切るよ。後でまた話そう?」


僕とは違う砕けた話し方で、男の名前を呼んでいた。

ゲンって誰や。

まさか、鳴海隊長じゃ…彼女は元々第1にいた、可能性はある。


電話が終わるまで待ち、後ろから腹に腕を回した。


「今の誰?後で話したい…。」


「っ!……もうこういうことやめてくれませんか?彼氏がいるんです。」


彼女の口から彼氏なんて聞きたくなかった、だってその相手は僕じゃないから。


「じゃあなんで…こないに応えてるんや。」


そっと胸に手をあて、伝わってくる通常よりも早い彼女の鼓動を感じる。


耳元でごめんと囁くと無理やり引き剥がされて、彼女は逃げていった。

僕が好きなくせに、他の男のものにならんといてや…。


僕も行かないと遅れてしまうので広場に向かった。


式には身が入らなかったが、途中から参加した日比野カフカには多いに笑わせてもらった。

隊長を呼び捨て、無許可の私語で腕立て100回をさせられている。


ふと璃沙に目を向けると、みんな笑っているのに彼女だけ笑っていなかった。

笑うてた方が幸せなんやで?やから待っといて、すぐ笑わせたる。


それはそうと、日比野カフカを取ったんは理由がある。

わざわざお笑い枠として解放戦力0%の者を取るなんてするわけがない。


怪獣たちが次々と蘇る中、突如現れたフォルティチュード9.8の反応。

十中八九、誤作動やとは思うが同時刻に不自然にバイタルが消失したやつがおる。


日比野カフカ、スーツ適正の異常な低さといい、こいつには何か違和感がある。

傍に置いて違和感の正体を突き止める。


「璃沙〜、逃げんといて〜。」


式が終わり無視する彼女を追いかけ回した。

終わらせたくない、どうしても終わらせたくないんだ。


「ほんまにごめん、あないなことして……君が好きなんや、君との未来が欲しい。ずっと一緒にいたい。」


「未来……ごめんなさい、次は失敗したくないので無理です。」


ダメだった、でも僕は諦めへん。

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