第6章 別の人
執務室に駆け込むとギリギリ間に合ったようで、ホッと息をつく。
副隊長と目が合ったので、おはようございますと敬礼をした。
席につくとメッセージがきていたので確認すると、間に合ったか?と弦からきていた。
別れたその日に他の男として付き合うことになるなんて想像もしてなかったな。
ギリギリで出勤してきたかと思うと、席についた瞬間彼女はスマホを見始めて、僅かに微笑んだ。
僕じゃなくて他に好きな男が出来たから、話もせず別れたんだろう。
なんてことを考えるが、本当はわかっている。
昨日酔った勢いで璃子さんとした、それを彼女は知っているんだろう。
裏切りたくはなかった、だけど酔うとどうしても…だから彼女と付き合ってから酔わないように飲んでいた。
家だからと気を抜きすぎた。
そろそろ時間となり彼女はスマホを置き仕事を始める。
顔が緩んでいる。
「神谷、ちょっとええか?」
立ち上がってこちらに来た彼女に書類を渡した。
付箋にメッセージを添えて…。
彼女は表情を変えずに付箋を見ている。
離したくない…昨日はあんなことを言ってしまったが、本当はずっと一緒にいたい。
それでも僕を許してくれないだろうから、ただ僕は気持ちを伝え続ける。
君を笑顔にするんは僕なんやから。
"君が好きや"