第6章 別の人
試験が終わった帰り、少しどこかへ行こうと歩を進めた。
気付くと立川から少し離れていて、懐かしい街並みが見えてくる。
すでに空は真っ暗でここまで歩いてきてしまったのかと自嘲した。
「君、神谷か?何故こんなところにいる?」
突然声をかけられそちらを向くと、パーカーの帽子を深く被り目元が前髪で隠れている男性がいる。
「……鳴海隊長。」
じっとその人物を見つめて、数年前のことを思い出す。
そうだ私、この人に告白された。
「私と付き合ってくれませんか…?」
誰でもいいから私を慰めて欲しい、この寂しさを埋めて欲しい。
「わかった。行こう。」
彼は考えることもなく即答して、私の手を引いていく。
ホテルに連れて来られてそのまま浴室へと向かう。
ほらやっぱり…鳴海隊長はすることしか考えていない。
逆に私にはそれが都合がよかった。
隊服を脱がされて一緒にシャワーを浴びた。
浴室を出るとそのままベッドへ行き押し倒されて、唇が重なる。
あの人とする時のような、高揚感や幸福はなかった。
胸が高鳴ることもない。
それでもいいと首に手を回して応えた。