第5章 移り変わり
「はぁ、はぁ……おった…なぁ、これなに?」
一瞬入り口に目線を向けると息を切らした副隊長が紙を翳しながら問いかけてくる。
目線をトレーニング器具に移し、口を開くことはしなかった。
彼が持っていた紙は、私が残してきたメモだった。
「別れましょう、さようなら?こんなんで納得出来るはずないやろ。」
私が知らないとでも思っているのか?
ちらっと時計を見るとすでに準備をしなければいけない時間だった。
「副隊長、そろそろ準備しましょう。」
彼の隣を通り過ぎてトレーニングルームを出ようもすると肩を抱かれて止められる。
「言えや。言わんとどこにも行かせん。」
「……私、バカだろうけど、そこまでバカじゃないんですよ。」
意味わからんと手を離してくれない。
「本当に遅れますよ、行きましょう?」
「嫌や!ちゃんと理由話してくれるまで離さん!」
嘘でしょ…あんなとこでしといて、本当に気付いてないとでも思ってるの?
私の口からは絶対に言いたくない、何が楽しくて彼氏と姉がしていたことを言わなきゃいけないの?
肩を抱かれているが無理やり進み、スーツを着てまた隊服を着た。
着替える時は彼も着替えていたので、手は離れていた。
から、スーツの力を使って全力で逃げた。