第5章 移り変わり
女の人の苦しそうな声が聞こえてリビングを覗くと、ソファの背もたれで姉の姿は見えないが、服を乱した宗四郎さんの身体が前後に揺れていた。
約束したのに…。
「っ、はっ…久しぶりの璃子さんのナカ、やばいっ…!」
「んっ、あっ…生だから、じゃないっ?あんっ!」
妹の彼氏だと知りながらするなんて…いくら酔っていたとしてもおかしいでしょ。
宗四郎さんだって…私と以外としないって約束したくせに。
私とは一度も生でしたことなんてない。
寝室に戻って、持ってきていた鞄の中からメモを取り出す。
そのままメモを残し、家を出た。
はぁ…死にたい。
どうせもう私はずっとひとりぼっちだ、いなくなってもなんの支障もないだろう。
家についてなんにもする気が起きなくてそのまま眠る。
けど、全然眠れなくて結局朝になってしまった。
行きたくない…そう思っても、今日は2次試験がある。
忙しくなるだろう。
今は5時、家を出るには早すぎるがどうせ眠れないので、トレーニングでもしようと基地に向かう。
彼からの連絡は一切きていない、別れるならそれでいいのだろう、姉がいるから。
基地についてトレーニングルームに来て、なんの為にトレーニングするのだろうと考えてしまった。
頑張る意味も、強くなろうとする理由も、全てなくなってしまった。
未来の子供たちの為に、とは思っているが、どうせ私1人の力じゃどうにもならない。
もう、何もかもどうでもいい。
何も考えたくないとひたすらトレーニングを続けた。