第3章 未知
もう見んといてとソファに戻されてしまった。
「そや、寒かったらそこのパーカー着てええからな。」
ソファの背もたれに掛かったパーカーに目を移し、そこに顔を埋めたら見られていて笑われた。
香水程きつくない爽やかな柔軟剤の匂いに副隊長の匂いが混じって、胸がふわふわしてくる。
キッチンに立つ彼をちらっと見て見られていないことを確認してから、パーカーを抱き締めて倒れた。
私のこの痴態はソファの背もたれに隠れて見えないはず。
「璃沙〜……りっちゃん?……寝てるん?」
りっちゃんってなんだ…。
肘掛に肘を起き顔を覗かせて起きてますと答える。
「なんや、めっちゃ寛いどるなぁ。」
慌てて立ち上がり、パーカーを持ちながらすみませんと敬礼をした。
「ええよええよ、自分家やと思って。」
本当に自分家にしてまえばええとかなんとか聞こえた気がしたが、何食わぬ顔で料理を続けているので、気のせいだと思い敬礼をしたまま見つめていた。
もうちょっとで出来ると声をかけられたのでキッチンに行き、すでに盛り付けが終わっている皿をテーブルに運ぶ。
匂いで気付いていたが、焼き魚だ。
焼き鮭に卵巻き、味噌汁。めっちゃ和食。
ご飯を食べ終わり片付けはさせてもらってソファで寛いでいると、膝を枕にされて流れた髪が擽ったい。
「僕やとあかん?今よりも怪獣に脅かされることが減って、好きな男と結婚して子供を作っても安心出来るような未来に、僕はおる?」
いきなりどうしたのだろう、いますよと笑ってみせた。
「やった!僕もおるよ、いつも君がおる。」
好きだという言葉がなくとも、彼は欲しい言葉をくれる。
「……好きです。」
呟いた言葉は口付けに溶かされた。
「僕も好きや。会うた時からずっと……。」