第3章 未知
泣いたまま眠ってしまった彼女の身体を拭いて隣に横になる。
彼女とはどうしても素面でしたかった。
酔った勢いに任せるなんて嫌だし、優しく抱けるかもわからなかったから。
どんな人よりもどんなものよりも、彼女には優しくしたい。
擦り寄ってきた璃沙の頬を撫で、さらさらで絹のような髪に指を通す。
「すき…ふくたいちょ……。」
「っ!…ふっ、寝言やなくて、起きとる時の君の言葉で聞きたいな。」
ほな、僕もちゃんと返したるから。
もう誰にも渡さへん、君から言うたんやから。他の人としないでと…。
額に口付けて、壊さないように優しく抱き締めた。
好きな子も彼女も作らないと決めていたが、璃沙となら共に在りたいと思う。
初めて会った時からその気持ちは膨れ上がり、零れてしまいそう。
「よろしくお願いします。」
と笑った君の顔がとても眩しく感じた。
それだけで僕は恋に落ち、何がなんでも手に入れたいと思っていたが、彼女の姉としてしまい諦めようと思ったのに…。
璃沙の笑顔を見たのは、それが最初で最後。
また僕が君を笑顔にさせてみせる。
この子を抱けた喜びで寝れそうにもないが、ゆっくり目を閉じた。