第3章 未知
「他の人としないから、保科副隊長も他の人としないで欲しいです。」
気持ちなんてもう伝わっているかもしれない、それでもいいから、他の人のものにならないで…。
「なんで?なんで他の子として欲しくないん?言ってくれへんとわからん。」
絶対にわかっている、笑ってはいない、真面目な顔で見つめられるけど、その言葉は確信を持っていた。
「おっと…言わへんの?じゃあいつから?」
キスをしようとすると手の平で押さえられて触れることは叶わなかった。
少し離れると自然と手も離れる。
「副隊長昇格の飲み会…。」
「ふふっ、じゃあ僕の方が先やね。」
なんのことかと聞く前に唇は塞がれて、舌が優しく絡んだ。
キスでこんな気持ちいいなんて感じたことない。
首に腕を回し縋るように応える。
もっと…もっとして欲しい、この人に気持ちよくしてもらいたい、この人を気持ちよくしたい。
今まで誰かを好きなったことがなかったから、知らなかった。
苦しくて切なくて楽しくて、この儚く消えてしまいそうな想いを…。
恋の仕方なんて知らない、ただこの人に溺れていく。
流し込まれた唾液を飲み込むと離れていった唇に寂しさを感じた。
「ええよ、璃沙としかしやん。」
名前…男の人に名前を呼ばれるだけで、こんなにも心臓が跳ねてふわふわとしてぎゅうと締め付けられるなんて……。
苦しい嬉しい…好き。
いろんな感情がごちゃ混ぜになって涙が零れていく。
「泣く程嬉しいん?これからもっと鳴かしたるから、覚悟しときや?」
そのまま抱き上げられてリビングを出ていく。
ナカで一度もイったことはない。
指でならあるけど、男のモノを挿れるのは苦痛でしかなかった。
それなのに寂しさを埋めようとしていた。
気持ちいいわけでもないのに、それに縋っていた。
演技をしてイったフリをしていた、この人ならそんなことをしなくてもわかってくれるだろうか、受け入れてくれるだろうか。
一度だけで終わらないだろうか。