第14章 隠し事
隊員選抜試験が終わり、妊娠5ヶ月になろうとしていた。
あの後、産婦人科に行って、ちゃんと妊娠していた。
宗四郎は誘ってくることもないので、その辺は安心している。
たぶんあの日は酔っていたからしたのだろう。
ただ問題なのは…お腹が出てきたこと。
どうやってこのお腹を隠そうか、いつも考えている。
「璃沙、顔色悪ない?体調悪いんやったら、無理せんでな?」
そう、これも問題なのだ。
そろそろ5ヶ月だというのに、悪阻が治まらない。
「そう?全然普通なんだけどな…。」
宗四郎にはあと1ヶ月くらいしたら伝えようかと思っている。
中絶出来なくなるから…。
それまでにバレなければいいけど。
宗四郎が近付いてきて、頬を撫で顔を覗き込まれる。
「ほんま?心配やから休んどって。」
「大丈夫だよーそんな心配しないで?」
今気持ち悪いからあまり近付かないでもらえると……ん?香った宗四郎の匂いで気持ち悪さが落ち着いていく感じがした。
そういえば私、いつも宗四郎の匂いを嗅んでいたな。
「お願いがあるんだけど…。」
なんでも言うてと言う彼から隊服を奪い取り、鼻にあてながら作業を再開した。
「え……君、結構やばいよな。前もこんなことあった…。」
気にしないでもらえると嬉しいです。
これがあったら仕事が出来るので。
自身の席に戻った宗四郎を確認して、そっとお腹に手をあてる。
お父さんだよ。声かっこいいし、いい匂いでしょ?
それにすっごく優しいよね。顔もすっごいかっこいいから早く見て欲しいな。
心の中で子供に話しかけて、隊服で顔を隠しながら笑った。