第12章 大切なあなた
第1部隊の医療棟に運ばれた私は意識がないうちに擦り傷等の治療を受け、喉に関してはあまり喋らないようにと言われてしまった。
「璃沙、少ししたら保科が来るぞ。」
「なる…「喋るな。」」
病室に入ってきた鳴海隊長に頷き、自身の手を見つめた。
私がこの手で未来を守った…。
お父さん、お母さん…まだ怪獣を根絶やしには出来てないけど、やったよ!私、頑張ったよ。
もしまた会えたら、褒めてね…。
鳴海隊長は何も喋らずに壁に背中を預け、笑っている。
なんであんなに笑ってるんだろう…。
鳴海隊長を見ながら首を傾げた。
「幸せそうだな。ボクが手を離したのは間違ってなかったようだ。」
答える代わりに笑った。
「なんで見つめ合って笑うてるんです?あまり見んでくださいよ。」
宗四郎が病室に入ってきて、私をその腕に抱き締める。
宗四郎の匂いがする…安心する。
褒めて!と言うように期待の目を向ければ、どしたん?可愛ええなと笑われた。
「あ、あい…「喋ったらあかん。」」
2度目…でも、この言葉は会ったらすぐ言いたかった。
「喋れるようになるまで僕待てるから、とっといて。」
私が言おうとしていたことに気付いたようだ。
「あーやけど…ご褒美は欲しい、ねんけど…あかん?」
の前に言わなあかんなと、緩んだ表情を引き締めた。
「君の姉、神谷璃子は……殉職した。」
言われた言葉を理解出来ずに見開いた目で宗四郎を見つめ固まる。
う、嘘だ…だってまだ話してない、仲直りしてない。
「う、「喋んなって。」嘘だよね…だって、まだ…お姉ちゃんと……。」
「おいオカッパ、少し経ってからでもよかっただろう。さっきまで笑ってたんだぞ。」
「どうせ言わへんとあかんもんでしょ……璃沙、泣いてもええねんで。いっぱい泣いたらええ…僕がずっと傍におるから。」
受け入れることが出来ない、たった1人の家族の死。
優しく頭を撫でながら抱き締めてくれる彼に返すことも出来ず、ただボーッとどこかを見つめた。
私の大切な人はみんないなくなってしまうの…?
じゃあもう、大切な人は作らない。
そう思っても、この力強い腕を離すことは出来なかった。