第12章 大切なあなた
「やめたくねぇんだろ。お前は刀、俺は拳。死ぬその瞬間まで、好きなことして楽しもうぜ。」
楽しい…?
その言葉が幼い僕に衝撃を与える。
12号の攻撃で吹っ飛ばされ口から血を吐き出した。
僕はガキの頃から完璧な兄貴に負けても負けても振ることをやめなかった。
僕は何故、止められても止められても、戦うことをやめなかった。
「兄貴に勝つため。」
「違う。」
幼い僕が答えを出せば、10号に否定される。
「それが唯一の僕の取り柄やから。」
「違う!」
第6にいた頃の僕が答えを出せば、10号に否定される。
「副隊長としての務めを果たすため。」
「かっこつけるな。」
副隊長になった僕が答えを出せば、10号に否定される。
幼い頃、何度も打ちのめされても兄貴に向かっていった、笑顔で……。
「刀を振るのが…楽しいから。」
「そうだ。」
12号の防ぎ吹き飛ばされる。
「やめたくねぇんだろ!?手放したくねぇんだろ!?そりゃお前…楽しいからだ!!」
10号の言葉がすっと心に入り込んで、納得している自分に笑えてきた。
僕の中で10号が力を増していくのがわかる。