第3章 未知
「訓練でオーバーヒート起こすなアホ。君本当、下手やなぁ、訓練のしかた。」
隊服に着替えた保科副隊長が横にしゃがみ、見下ろしてくる。
「終わりや言うたやろ?飯食って風呂入って寝ろ。そんくらいも出来んのか?」
荒い息を繰り返しながらボーッと彼を見つめる。
まだ何か言いたげにしている。
「……僕が見たろか?帰る準備して執務室来い。」
見る?何を?
血を袖で拭き起き上がらせられた。
汚れた袖を見て隊服を脱がせ、悲鳴を上げる身体で走って洗いに行く。
ついてきた彼がええよと隊服を奪おうとしたが、手を離さなかった。
「はよ着替えて来い。やないと、きつーいお仕置したるで〜?」
きつーいお仕置は訓練をサボったらじゃなかったのか。
血を粗方流し、その隊服を持ったまま着替えに向かった。
彼が返せと叫んでいるが本気で怒っている声ではないので無視した。
着替えてから執務室に向かいながら隊服の袖を振る。
乾いてくれ…副隊長が着て帰れない。
だがもう執務室についてしまった。
「すみません、まだびしょびしょです…。」
「ええ言うたやん。ありがとう!」
っ!あの時の笑顔……好きだ。
気付けば私は副隊長の肩に手を置いて顔を近付けていた。
「やから……なに?僕としたいん?他の男じゃ足らんのか。でも、僕としたって意味ないやろ。一番抱かれたい人がおる言うとったやんか。」
口元を手で覆われ押さえられる。
またやってしまった…たまに想いが溢れてとんでもないことをしてしまいそうになる。
こんなとこを姉に見られたら、それこそ、縁を切られてしまうだろう。
彼から離れて俯き謝った。