第3章 未知
「ほら、まだやで!訓練が終わるまであと1分。100回打ち込んで来い!」
1分で100回ってどういうことよ…。
訓練室でスーツを着て非常用のナイフを片手に、専用武器を持つ男に攻撃を繰り返す。
全て、躱される。
「神谷、お前…やっぱ刀剣の方がええな。解放戦力が伸びとる。」
このまま僕と頑張ろなと微笑んで頭を撫でられた。
その顔をボーッと見つめ、見た目とは裏腹に心臓はうるさかった。
「宗四郎くん、璃沙!終わった?」
保科副隊長は終わりましたと返し、私はコクっと頷いた。
副隊長になったのに、ずっと姉には敬語なんだ。
「次は1分で100回打ち込めるようにしとき。」
彼はそう言って姉に駆け寄る。
だから無理ですって。
姉と一緒に訓練室を出ていく彼を見送り、ナイフを握った。
次がいつなのかはわからない、だから今やっておかないと…。
100回は無理でも、私に訓練をつけたことを後悔させたくなかった。
せめて60回、1分で打ち込めるようにしよう。
「神谷さん、そろそろ終わりにした方が…。」
「小此木…続けさせて。あともう少しだから。」
私が立川に来た時に入隊したオペレーターの小此木が通信機からやめるよう声をかけてくる。
もっと早く、もっと、もっと…!
あの人を驚かせたい、喜ばせたい、強くなって背中を預けてもらえるようになりたい。
何度も腕を振り、30回を60回に出来たとこで力尽き、床に倒れ込んだ。
苦しい…オーバーヒートだ。
鼻や口から血が吹き出る。