第11章 離れゆく心
静かに涙を流しながら腕の中に収まっていた。
頭に回された手が額を押さえながら上を向かせてくる。
「あんなん忘れや。僕がやらんかったからヤケになっとるだけや。大丈夫やで、璃沙がいなくなったら僕泣いてまうからな。気にしたらあかんよ。」
何度も瞼や頬にキスをされて、涙を掬い取られる。
もうどうしたらいいかわからなかった。
姉に言われたことも辛くて、よりを戻してくれないくせに優しくされるのも辛くて…それなのに大好きやと何度も囁くから、ぐちゃぐちゃになって涙が止まらない。
「うぅ…っ、うっ…宗四郎だって、私のこといらないくせにぃ…ひっ、うっ…ぅぁああん、ん〜〜バカぁ…。」
彼に当たってどうするのだろう、今泣いてるのは姉が原因だと言うのに。
「そないなことない、僕は璃沙におって欲しい。ほんまにもう、めっちゃ大事やねん。やから、引退するまで待っとって。璃沙の未来は僕のもんや。」
今どんなに甘い言葉吐かれても、涙を誘うだけで信じられなかった。
隊服の前が開かれインナーに爪を立てながら握る。
肌を引っ掻いてしまっているだろう。
「なんで、っ…私を好きに、なったの?うぅ…どこが、好きなの…?」
私より先に好きになってくれていたことは知っていた。
「笑うた顔言うたやん?…あれ、言うてないっけ?よろしくお願いします言うて笑うてたんめっちゃ可愛くてなぁ、一目惚れみたいなもんや。やから君には笑うてて欲しい。」
そういえばいつも笑ってって言われていた気がする。
というか、それって初めて会った時のことだよね…一目惚れだなんて…嬉しすぎて冷えた心がぽかぽかしてくる。
姉の方が美人なのに私に一目惚れしてくれるなんて…。
好きと呟いて首に吸い付いた。
唇を離してそっと彼の顔を見上げると眉間に皺が寄って、さすがに痕をつけるのはダメだったかと不安になる。
「ん〜〜可愛ええ!!キスマつけて泣いとる顔で上目遣いされたら、そりゃあ堪らん!抱きたい!セックスさせてやー!!」
そうだ、この人酔ってるんだった。