第11章 離れゆく心
「えっと…なんで呼ばれたの?」
「やから、助けて欲しかったんや。貞操の危機やったわ。」
貞操ね…あなたは酔っ払ったら貞操観念低いけどね。
2人共私を挟むように座って、姉に関しては私を退けようとしてくる。
守って〜とだらしなく私に縋る副隊長を可愛いと思った。
「なによ!中学ん時から男に媚びってやりまくってたくせに、今更お姉ちゃんのを取るの!?」
いつお姉ちゃんのになったのだ…副隊長とは付き合ったことすらないだろう。
「聞かんくてええから。酔っとるからこないなこと言うとるだけや。」
耳を塞がれて引き寄せられる。
姉を庇ってるようにも聞こえて辛い。
姉が喋らなくなったのか耳から手を離されて、後ろから肩を抱かれた。
「璃沙なんかいなくなればいいのに。」
え…なんでそこまで言われなきゃいけないの?
ずっと嫌いだったけど、たった1人の家族なのに…。
「僕はおって欲しいよ。璃沙に生きてて欲しい。」
倒れそうな程後ろに引かれて上を向くと、影が落ちた。
唇が重なって離れると耳を塞ぐように頭を引き寄せられて、その胸に閉じ込められる。
「神谷、お前はもう寝ろ。帰さへんのありがたく思いや!次璃沙になんか言うたら許さへん。」
呼び方が……心にナイフを刺されたような痛みが少し和らぐ。
姉はベッド使うからね!と言って寝室に行った。
副隊長が本気で怒っているのが伝わったのだろう。
まあ伝わらない方がおかしいが…こんなに怒っているところは初めて見た。
声は驚く程低く、私を抱く手が拳を握って震えている。